ロンドンのエースカフェでの人気の定番イベントの一つとなっているのが「MOD N’ MINI NIGHT」です。
毎月第一木曜日に開催されるこのイベントには、クラシック&ビンテージの「MINI -ミニ-」愛好家が自慢のマイカーを見せびらかせにやってきます。
筆者もイギリス生活していた時代は、MINI愛好家でした。中古車であれば手軽に購入できて、おしゃれなMINIは免許書を取り立ての初心者ドライバーにぴったりの車でした。
少し昔の話になりますが、友人が免許取りたての頃、リバプールで連休を過ごすために、私も含め女子4人でロンドンからモーターウェイ(無料高速道路)でMINIを快適に走らせ、時にBMWなどの高級車を追い抜いた時などは、雄たけびをあげてはしゃいでいたりしていた事等、今となっては懐かしい思い出です。
そんな帰り道のモーターウェイで、運転にも慣れ、勢いづいた友人が大きなトラックローリーを果敢に追い越そうとした時、ハンドル操作を誤り、高速道路のガードレールを突き抜けて、高速から落下する事故を起こしてしまいました。私たち4人を乗せたMINIは、高速道路の脇を流れる小川でアップライトに着地するまで何度も何度も面白いくらい転がり、気づいた時は後部座席で私の横に座っていた友人が、どういういきさつかフロントガラスを背中にして私とほぼ向かい合わせになっている状態になっていました。勿論全員シートベルトは着用していましたが、それすらすり抜けてしまうくらい何度も転がり落ちていったのです。
車が止まった瞬間、ローリードライバーに乗っていたと思われる男性が二人すごい血相で現れ、「Cut the engine! Cut the engine!」「Car key! Car key!」と叫んでいました。ガソリンタンクにはほぼ満タンのガソリンが入っていたので、彼らがいなかったら、引火して爆発が起きていたかもしれません。
その後、彼らは割れてなくなったフロントガラスから私たちを一人一人車から救出し、ほどなくして彼らが呼んだと思われる救急車が到着すると、「Bye-bye! Take care!」と言って颯爽と立ち去っていきました。私たちはあまりの衝撃にただ茫然と彼らの指示通りに車から離れて座り込んでいただけで、彼らにお礼を言ったかどうかすら今となっては憶えていないほどでした。
その時に彼らが、「MINIでラッキーだったね!」と言っていた事は鮮明に覚えています。この話をイギリス人にする度にも「MINIで命拾いをしたね」と、何度も言われました。
MINIはその名の通り小さい車であり、バランス良く4人で乗車していた事も相まって、落ちて転がった時も実に絶妙なバランスで衝撃も少なく、私たちも車と一体になって上手に転がったのだろうと言うのです。MINIじゃなかったら、車が大破して、あんなにきれいな状態で着地する事もなかっただろうと。
確かに4人で乗れば、あまり車内にスペースもないので、頭部や体を車内のどこかに派手にぶつける事もなく、幸い一人の重傷者も出さず、打撲程度の軽傷で済んだのだと悟りました。
今では笑い話ですが、転がりながら何度も「終わった。ここで人生が終わるんだ。」と思ったものです。
事故が発生した瞬間は、あまりの事に実感がわかず、ただただ茫然としてましたが、その後病院の簡易的な検査で、4人全員に重症者が出なかった事や頭を打っていないという事が判明したので、胸をなでおろしたのでした。病院を出る時には、小川にはまって皆泥まみれだったので、お互いの顔を見合わせて笑い合い、性懲りもなく転がった話で盛り上がり、また救急病院で対応してくれたドクターがイケメンだった等と不謹慎な事まで飛び出して、笑いながら振り返ったりしていました。
命を助けてくれたMINIはお釈迦になってしまったので、電車でロンドンへ帰ろうと最寄りの駅へ行き、ロンドン行きの電車を待つプラットフォームに着いた途端、何故か突然私は罪の意識に目覚め、「4人の中では自分が一番年上だったのに、どうしてこんな危険な目に友人を遭わせてしまったんだろう?」とか、「どうして、運転していた友人にスピードを落とすように言わなかっただろう?自分が年上なんだから、言うべきだったのではないか?」「自分が調子に乗ってしまったから、皆の命が危険に晒されてしまったんだ・・・」等と自責の念に駆られ、私は突然大号泣してしまいました。すると皆も同様に、それぞれが笑ってごまかしていた不安が堰を切ったかの様にカミングアウトしたのか、全員で大号泣大会に・・・(笑)。
若気の至りではありましたが、人生の良い教訓になりました。
そして、今元気に自分がこうして生活できるのも、MINIのお蔭でもあり、また名前も知らないローリードライバーの方たちのお蔭であると時々振り返っては感謝の気持ちを思い出します。
いくらMINIに乗っているからといって、良い子は絶対に真似などしないでくださいね!
くれぐれも『安全運転第一』を心がけてください!